喉の腫れ、声のかすれは甲状腺腫かも?甲状腺腫の症状・原因を解説
column

- コラム
「最近、喉の前あたりがふくらんでいる気がする」「声が出にくくなった」と感じたことはありませんか?
その症状は、もしかすると甲状腺腫(こうじょうせんしゅ)が原因かもしれません。
甲状腺は、首の前面(のどぼとけのすぐ下)にある小さな臓器で、体の代謝をコントロールする重要なホルモンを分泌しており、異常が起こると、体調の変化だけでなく、首の外見や声にも影響が出ることがあります。
今回は、甲状腺腫の初期症状や原因、受診の目安について詳しく解説します。
甲状腺腫とは
「甲状腺腫」とは、甲状腺が腫れて大きくなった状態のことを指します。
必ずしも「腫瘍(しゅよう)=がん」という意味ではなく、良性の変化であることも多いのが特徴です。
甲状腺腫には、大きく分けて以下の2つのタイプがあります。
- びまん性甲状腺腫:甲状腺全体が均一に腫れるタイプ(例:バセドウ病、橋本病など)
- 結節性甲状腺腫:一部にしこり(結節)ができるタイプ(例:腺腫、のう胞、甲状腺がんなど)
いずれの場合も、初期には自覚症状がほとんどないことが多く、健康診断や人間ドックの超音波検査で偶然見つかるケースもあります。
甲状腺腫の初期症状
甲状腺腫の初期症状としては、下記のような症状が現れることが多いです。
1. 喉の腫れ・ふくらみ
もっとも多い初期症状は、首の前側の腫れです。
鏡で見ると喉の下あたりがふくらんで見えたり、飲み込む動作をしたときに「動くしこり」の存在に気づいたりすることがあります。
甲状腺腫自体は痛みを伴わないことが多いため、本人は気づかないことも少なくありません。
家族や友人に喉の腫れを心配されたり、病院に受診した際に医師から指摘されることで受診に至る方も多いです。
2. 声のかすれ・出にくさ
甲状腺が大きくなると、声帯を動かす神経(反回神経)を圧迫し、声がかすれる・出にくいといった症状が出ることがあります。
喉のかすれは、風邪や花粉症のせいかなと思ってしまいがちですので、まさか甲状腺に問題があるとは気付きにくいでしょう。
甲状腺腫による喉のかすれや声の出にくさは、風邪の後の一時的な声枯れとは異なり、長く続くことが特徴です。喉のかすれ・声の出にくさ以外の症状がなく、長く続く場合には注意が必要です。
3. 飲み込みにくさ・喉の違和感
甲状腺の腫れが食道や気管を圧迫すると、食べ物が飲み込みにくかったり、喉に何か詰まったような違和感が出たりすることもあります。
腫瘍が次第に大きくなると、マフラーやハイネックを着たときに圧迫感を感じるようになる人もいます。
4. ホルモンバランスによる全身症状
甲状腺腫の中には、ホルモンを出しすぎたり(機能亢進)、出さなすぎたり(機能低下)するタイプもあります。
その場合、次のような全身症状が見られます。
- 機能亢進症(バセドウ病など):動悸、汗が多い、体重減少、いらいら、不眠
- 機能低下症(橋本病など):倦怠感、むくみ、寒がり、体重増加、便秘、抜け毛
甲状腺腫の主な原因
甲状腺腫の原因はさまざまですが、主な原因としては以下の通りです。
- 自己免疫の異常(バセドウ病・橋本病)
免疫のバランスが崩れ、甲状腺を攻撃してしまうことで腫れが生じます。 - 良性腫瘍やのう胞(液体のたまり)
しこりの多くは良性ですが、一定の割合でがんが含まれるため精密検査が必要です。 - 甲状腺がん
初期は痛みもなく、硬いしこりとして見つかることがあります。早期発見が重要です。 - ヨウ素の過剰摂取または不足
昆布や海藻類に多く含まれるヨウ素のバランスが崩れると、甲状腺の働きに影響します。
甲状腺腫の検査方法
甲状腺の異常が疑われる場合、以下の検査で診断することが多いです。
- ・触診・視診:腫れやしこりの有無を確認
- ・超音波(エコー)検査:しこりの大きさ・性質(固形・のう胞)を判定
- ・血液検査:甲状腺ホルモン(T3・T4・TSH)や抗体の有無をチェック
- ・細胞診:しこりがある場合は、針を刺して細胞を採取し、良性・悪性を診断
早期に発見できれば、経過観察で済むケースも多い一方、放置すると声帯麻痺や呼吸障害などを起こすこともあります。
甲状腺腫は、早期発見・早期治療が大切
甲状腺の異常は、痛みがないために気づかれにくいのが特徴です。
しかし、早期に発見・治療すれば多くの場合は薬物療法や経過観察でコントロール可能ですので、下記のような症状がある場合は、早めに内科や甲状腺専門医を受診しましょう。
- ・首の前側にふくらみやしこりを感じる
- ・声がかすれる、出にくい状態が続く
- ・飲み込みづらさや喉の圧迫感がある
- ・体調の変化(動悸・むくみ・体重変動など)がある
当院では、専門医による甲状腺内科の診療を実施しておりますので、甲状腺に関する各種検査から診察、治療まで一貫して院内で対応することが可能です。
もしも総合病院での治療が必要と判断した場合には、近隣の医療機関とも連携しておりますので、安心してご相談ください。
甲状腺内科の詳細はこちら