百日咳ってどんな病気?対処法は?妊婦さんや乳幼児は感染対策の徹底を
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- コラム
現在、百日咳という感染症が全国的に感染拡大しています。
名前は聞いたことがあっても、どういった症状なのかはまだまだ知られていないことも多いのが現状です。
今回は百日咳がどんな感染症なのかや、特に感染リスクが高い方についてまとめました。
百日咳とは?
百日咳(ひゃくにちぜき)とは、「ボルデテラ・パータスシス」という細菌によって引き起こされる呼吸器感染症です。その名の通り、激しい咳が長期間(通常1~2か月、ひどいと100日以上)続くのが特徴で、特に乳幼児や妊婦、基礎疾患を持つ人にとっては重症化のリスクが高いため、注意が必要です。
百日咳の主な症状
百日咳の症状は、以下のように段階的に変化します。
- カタル期(発症初期:1〜2週間)
風邪に似た症状が現れます。軽い咳、鼻水、微熱など。感染力が最も強い時期です。 - 痙咳期(けいがいき:約2〜6週間)
特徴的な連続した激しい咳(発作性咳嗽)が起こり、咳の後に「ヒュー」という吸気音が出ることがあります。特に夜間に悪化し、嘔吐を伴うこともあります。 - 回復期(数週間〜数か月)
この時期になると咳は徐々に収まりますが、再び風邪をひくと咳がぶり返すこともあるため注意が必要です。
百日咳の感染経路
百日咳は飛沫感染で広がる感染症です。
咳やくしゃみによって空気中に飛び散った病原菌を吸い込むことで感染するため、日頃からこまめな手洗いうがい、マスクの着用等を行う必要があります。
また、潜伏期間は7~10日程度で、症状が出始めてから約3週間は感染力があります。特に乳幼児や高齢者と同居している家庭では、家族内感染に注意が必要です。
百日咳のリスクが高い人とは?
百日咳の感染リスクが特に高い方としては、下記に当てはまる方が挙げられます。
妊婦さん
妊娠中に百日咳に感染すると、胎児への直接的な影響は少ないものの、出産後に新生児に感染させるリスクが非常に高くなります。新生児は免疫が未熟で、百日咳を発症すると無呼吸や重篤な肺炎を引き起こす可能性があります。
そのため、日本でも妊娠後期(27〜36週)に百日咳ワクチン(Tdapワクチン)を接種することが推奨されています。(現在、百日咳ワクチン単独接種は国内未承認となっていますが、輸入ワクチンを導入しているクリニックもございます)
乳幼児
百日咳による重症化や死亡例の大半は生後6か月未満の乳児に集中しています。生後3か月未満の赤ちゃんは、まだワクチン接種が不十分なため、重症化しやすく非常に危険です。なかには集中治療を必要とし、命に関わる場合も少なくありません。
先述した通り、乳幼児を守るためにも妊婦のうちにワクチン接種を検討されることをおすすめします。
高齢者や持病のある人
高齢者や持病のある方は、気道や免疫機能が低下している場合も多いです。そういった方は、長引く咳で体力が奪われ、さまざまな合併症を引き起こす可能性が高まりますので、十分ご注意ください。
百日咳の検査・診断・治療
百日咳の感染が疑われた場合の検査・診断・治療法については下記のような流れで実施されることが多いです。
検査方法
百日咳の診断には以下の方法が用いられます。
- 咽頭ぬぐい液のPCR検査(最も正確で早期に診断可能)
- 血液検査(抗体価の測定)
- 鼻咽頭ぬぐい液の培養検査
特に早期の診断が重要で、疑わしい症状があればすぐに医療機関を受診することが推奨されます。
百日咳検査に関する詳細はこちらよりご確認ください。
治療方法
発症から2週間以内に抗菌薬を使用することで、症状の緩和と感染力の低下が期待できますが、咳自体には効果的な特効薬がないため、おもに対症療法(鎮咳薬、吸入など)が中心となります。
百日咳の予防法
百日咳の感染から身を守るための予防法としては、予防接種をはじめとした感染対策が推奨されています。
定期予防接種(乳幼児)
日本では百日咳を含む「四種混合ワクチン(DPT-IPV)」が、生後3か月以降に定期接種として行われています。(※)
- 1期初回接種:生後3か月〜12か月未満に3回接種(20〜56日間隔)
- 1期追加接種:3回目接種からおおむね1年後に1回
この接種によって重症化の予防効果は高く、多くの国でも推奨されています。ただし、免疫は年齢とともに低下するため、10歳以降の抗体価は下がる傾向がありますので、一度のワクチンだけでは完全に感染を防ぐことが難しいでしょう。
大人の追加接種
欧米諸国では、妊婦やその周囲の家族(コクーン戦略)に対する追加接種が積極的に推奨されています。日本では定期接種の対象外ですが、希望すれば接種できる医療機関もあります。
特に以下の人は接種を検討しましょう。
- 妊娠中の方
- 乳児と接触が多い家族や保育関係者
- 高齢者施設職員や医療従事者
※2025年7月現在、国内承認の四種混合ワクチン・三種混合ワクチンが入手しづらくなっています。
2025年7月現在、子どもの定期接種に用いられている四種混合ワクチン(破傷風・ジフテリア・百日咳・ポリオ)・三種混合ワクチン(破傷風・ジフテリア・百日咳)に含まれる破傷風ワクチンが、当面の間出荷停止となることが販売元より発表されています。
それに伴い、四種混合ワクチン・三種混合ワクチンそれぞれも全国的に入手が困難な状況となっております。
なお、国内では未承認の輸入ワクチンとして「成人3種混合ワクチンBoostrix®︎」を導入しているクリニックもございますので、それを代用することも可能です。
接種メリットとリスクを十分ご判断いただいた上で、選択いただくことをおすすめします。
日常生活での感染対策
- 手洗い・うがいの励行
- 咳エチケット(マスク着用・口を覆う)
- 風邪症状がある人との接触を避ける
- 十分な休養と栄養摂取で免疫力を保つ
百日咳と似た症状の病気にも注意
百日咳は、風邪や気管支炎、喘息などの病気と見分けがつきにくいことがあります。特に**咳だけが続く「非典型的百日咳」**のようなケースでは、早期の診断が難しく、知らないうちに周囲に感染させてしまうこともあります。
「風邪だと思っていたのに、咳だけがずっと治らない…」という場合は、早めに内科を受診しましょう。
当院では成人3種混合ワクチンBoostrix®︎を導入しています
百日咳は、ワクチンで予防可能な一方で、未接種の人には重大な健康リスクをもたらします。特に乳幼児は重症化しやすく、妊娠中の感染にも注意が必要です。
家族や身近な人を守るためにも、自身の健康管理とともに予防意識を高く持つことが大切です。
また、当院では、輸入ワクチンである「成人3種混合ワクチンBoostrix®︎」を入荷しております。
昨今の国内ワクチン不足に伴い、輸入ワクチンをご活用される方も多くいらっしゃいますので、接種をご希望の方やご検討されている方はお気軽に当院医師までご相談くださいませ。